千代先生とは三代目がご存命であり、私が築地の花柳舞踊道場で代稽古をさせていただき始めた頃にお会いしました。 
当時、千代先生のもとへ中国からお二人の留学生がいらしており、その方たちに私が代稽古としてお稽古をさせていただくことになりました。
まだまだ未熟であった私のお稽古に対して、丁寧に質問をして下さり、私の拙い返答に対しても真摯に耳を傾けて下さったのが初めての出会いで、今でも鮮明に覚えております。
千代先生はきっと思うことが色々とあられたことと思いますが、優しく温かい目で代稽古の私のことも育てて下さっていたのだと、今更ながら先生の懐の深さが身に沁みます。

その後三代目がお亡くなりになり、家元継承問題が起こった際には、「私は三代目様からきちんと聞いていました。」とはっきりと仰って下さり、「本来はあなたが継ぐべきなのだから」と、様々な御尽力を頂きました。 その当時の私は、正直信じられる人が少なく、当時の流儀や舞踊界に対して猜疑心を持っていたところがあったのですが、千代先生の存在は、本当に私の心を救ってくださいました。

千代先生の舞踊に取り組む姿勢、熱意、行動力、発想力、勤勉さ、何よりその生き方に感化され、今こうして私自身が一舞踊家としていられるのだと思っております。
先生が遺して下さった思いやご縁、そして素晴らしい作品群を精一杯大事に守っていきたいと思います。
そして偉大な功績である『日本舞踊の基礎』をより多くの子供たちに広め、日本舞踊の発展のために尽力していくことが、返しきれないほど受けた千代先生からのご恩に少しでも報いる事ができる唯一の方法と、これからも舞踊家として精進して参ります。

千代先生、どうぞ心安らかに、と祈っておりますが、わがままを言わせてもらえるのならば、まだまだ未熟な私を天国からご叱咤下さい。
心よりご冥福をお祈りいたします。

寿柳 貴彦